新型インフルエンザウイルス(H1N1型)の一部に、人に感染しやすくなる原因とみられる変異が見つかったことを、河岡義裕・東京大医科学研究所教授(ウイルス学)らのチームが15日付の英科学誌「ネイチャー」(電子版)で発表した。
インフルエンザウイルスは、表面の突起状のたんぱく質(HA)が人や豚などの細胞にくっついて感染する。河岡教授はいくつかの新型ウイルスのHA部分のアミノ酸配列を調べたところ、従来の豚型ウイルスの一部が変異していた。同じ変異は強毒性鳥型ウイルス(H5N1型)が人に感染した際にも見つかっている。
河岡教授は「今は新型ウイルスが人に適応している過程にあるとみられる。南半球での流行をへて、ウイルス表面の変異がさらに広がると、人への感染力が強まる可能性がある」と話している。
http://mainichi.jp/select/science
/news/20090616k0000m040101000c.html
新型インフル-ウイルス変異し感染力高まる
新型インフルエンザ(H1N1型)の一部に人間の細胞に侵入しやすいように、すでに変異していることが、河岡義裕東京大医科学研究所教授らの研究チームで明らかになった。14日付けの英国科学誌ネイチャー(電子版)で発表した。
東京大医科学研究所の河岡教授らのチームは通常ウイルス以外の物質を取り除くため、遠心分離家にかけるが、河岡教授らはかけずに撮影したところ、 1,000分の1ミリほどの細長い形をしていた。変異は、ウイルスの表面にある「ヘマグルチニン(HA)」と呼ばれるタンパク質で見つかった。アジアなどの鳥インフルエンザ(H5N1型)でも報告されていた。河岡教授は「H1N1型は豚のウイルスが人に感染し、適応過程にあると見られ、変異部分を注意深く監視していく必要がある」と語った。
http://jp.ibtimes.com/article/biznews/090615/36081.html
ヘマグルチニン
(hemagglutinin、haemagglutinin、HA)とは、インフルエンザウイルス、およびその他多くの細菌、ウイルスの表面上に存在する抗原性糖タンパク質である。
ウイルスはこのヘマグルチニンの働きによって細胞に感染する。
ヘマグルチニンという単語は、in vitroにおいて赤血球(hem)を固まらせて凝集体(agglutinate)を作ることから名付けられた。
サブタイプ
ヘマグルチニン(以下HA)は少なくとも16種類が存在する。これらのサブタイプはH1からH16の種類に分けられる。インフルエンザウイルスの亜型名(例:H5N1など)のHはこのHAの種類を表している(Nはノイラミニダーゼの種類を表す)。最後に発見されたH16は、最近スウェーデンとノルウェーからのユリカモメから分離された例のみである[2]。H1、H2、H3の3種類はヒトインフルエンザウイルスに存在する。
H5N1(トリインフルエンザ:avian flu)は極まれにヒトにも感染する可能性がある。ヒトの患者から発見されたトリインフルエンザウイルスのH5はアミノ酸配列が1つ変異していた。そのため、H5N1ウイルスのレセプター特性が変化してヒトにも感染するようになったということが発表された[3][4]。この発見は通常ヒトには感染しないH5N1ウイルスがどのようにしてヒトの細胞に感染するのかを的確に説明できる。
また、このH5N1ウイルスのHA抗原の変異が高い病原性の原因にもなっていることがわかった。これはプロテアーゼによる活性型への転換が容易になったためである。
機能とメカニズム
機能
HAには重要な機能が2つある。
* 目標の動物細胞表面にあるシアル酸を認識して結合することにより細胞に感染する。
* 宿主細胞のエンドソーム膜とウイルス膜を融合させることにより、ウイルスのゲノムを細胞内に挿入する。
メカニズム
HAが標的細胞膜に結合する様子
HAは標的細胞表面のシアル酸に結合する。そのため、ウイルスが細胞表面から離れなくなる。ウイルスはそのまま細胞膜に包み込まれ、ウイルスを入れたままエンドソームの形で細胞内に取り込まれる。
次に細胞はエンドソーム内部を酸化させ、ウイルスをリソソームに送り込んで消化しようとする。しかし、エンドソームのpHが6.0まで低下するとHAの構造は不安定になり、折りたたまれたペプチド構造が部分的に展開する。するとタンパク質で隠されていた強疎水性の部位が開放される。
この融合ペプチド(fusion peptide)を、あたかも鉤のようにエンドソーム膜に挿入して固定する。さらに、HA分子の残りの部分は新しい構造(より低いpHでも安定な構造)に折りたたみ直され、融合ペプチドを引き寄せる。するとウイルス自身もエンドソーム膜に引き寄せられ、膜と融合する。
その後、ウイルスのRNAは細胞質に挿入されて増殖を開始する。
構造
HAはホモ3量体の重要な膜糖タンパク質である。シリンダーのような形をしており、長さはおよそ135 Åである。
HAを構成する同一の3つのモノマーは中心部にαヘリックスを持っており、この頭部にシアル酸結合部位がある。HAのモノマーはまず前駆体が合成される。この前駆体は後にグリコシル化されて分裂され、HA1とHA2の2つのサブユニットになる。
それぞれのHAモノマーは、膜にくっ付いた長いヘリックス鎖で構成されている。
参考
1. ^ Nelson DL and Cox MM, 2005. Lehninger's Principles of Biochemistry, 4th edition, WH Freeman, New York, NY.
2. ^ Fouchier RAM, Munster V, Wallensten A, et al, 2005. Characterization of a novel influenza A virus hemagglutinin subtype (H16) obtained from black-headed gulls. J Virol vol 79, issue 5, pp2814-22
3. ^ Suzuki, Y, 2005. Sialobiology of Influenza: Molecular Mechanism of Host Range Variation of Influenza Viruses in Biological and Pharmaceutical Bulletin, vol 28, pp399-408
4. ^ Gambaryan A, Tuzikov A, Pazynina G, Bovin N, Balish A, Klimov A, 2006. Evolution of the receptor binding phenotype of influenza A (H5) viruses in Virology vol 344, issue 2, pp432-8
* Yamada S, Suzuki Y, Suzuki T, et al, 2006 Haemagglutinin mutations responsible for the binding of H5N1 influenza A viruses to human-type receptors. Nature vol 444, issue 7117, pp378-82.
* Hatta M, Gao P, Halfmann P, Kawaoka Y, 2001. Molecular Basis for High Virulence of Hong Kong H5N1 Influenza A Viruses in Science vol 293, pp1840-1842.
* Senne DA, Panigrahy B, Kawaoka Y, Pearson JE, Suss J, Lipkind M, Kida H, Webster RG, 1996. Survey of the hemagglutinin (HA) cleavage site sequence of H5 and H7 avian influenza viruses: amino acid sequence at the HA cleavage site as a marker of pathogenicity potential in Avian Disease vol 40, pp425-437.
* Weis WI, Brünger AT, Skehel JJ, et al, 1990. Refinement of the influenza virus hemagglutinin by simulated annealing. J Mol Biol vol 212, pp737-761.
* White JM, Hoffman LR, Arevalo JH, et al, 1997. Attachment and entry of influenza virus into host cells. Pivotal roles of hemagglutinin. In Structural Biology of Viruses. Chiu W, Burnett RM, and Garcea RL, editors. Oxford University Press, NY. pp80-104.
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%98%
E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%83%81%E3%
83%8B%E3%83%B3
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