疾患腎移植:病院側「人工透析より費用かからない」
愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院で4日開かれた会見で、病気のために摘出された腎臓を別の患者に移植した経緯が初めて明かされた。執刀した万波誠医師は「出合い頭」という言葉を使い、「計画性は全くない。その時腎臓があるかどうかだ」「困っている腎不全患者のために人工透析より費用がかからず、生活の質が向上する」として移植を進めるべきとの持論を展開した。「使える臓器を使う」という考えの実践に、移植医療関係者から、改めて驚きと批判が噴出した。
◇繰り返し、正当性主張
会見で万波医師らは、繰り返し移植の正当性を主張した。主な一問一答は次の通り。
−−移植に耐える腎臓だったのか。
分からない。ドナー(臓器提供者)からは「腎臓を使えるんやったら使わせてほしい」という口頭の了解は取っている。11例はすべて、腎摘出をしなくてはならないものだった。レシピエント(移植を受ける人)には「がんの腎臓でも大丈夫か」と言って了承を取った。
−−移植学会は「使える腎臓なら元に戻せ」としている。
戻す場合は、手術全体が7、8時間になる。取り出しだけなら1時間ちょっと。この説明に「ご免被る」と言った患者からは摘出している。ドナーと家族には「(腎臓を)残すこともできる」などと十分説明している。患者をだましたことはない。看護師にも説明して行っている。
−−同意書はあるか。
11例の中で、よそから来た腎臓については同意書があるものもある。他のものはない。ドナーとレシピエントには面識はない。病気の腎臓を移植する手術は徳洲会病院に移ってからやった。
−−計画性は。
「捨てる腎臓があるならお願いします」と友人に言っている。計画性は全くなく、すべて出合い頭。その時腎臓があるかどうかだ。
−−ドナーとレシピエント双方とも健康か。
手がけたドナー6人やレシピエントは全く問題ない。
−−先生の信念とは。
患者が腎不全で困っていると、何とかしようという気が起きてくる。(患者の命が)少しでも長く続けばいいと思っている。透析は完治しないし費用がかかる。移植したら10分の1くらいの金で済む。もっと移植を進めるべきだ。何より患者の生活の質が上がる。私は患者の喜ぶ顔を見るのが生きがいだ。
−−院長は事前に移植を知っていたのでは。
(貞島博通院長)正式の報告はなかったが、手術があったらしいとは知っていた。
◇移植受けた女性「感謝している」
今年9月に移植を受けた宇和島市の女性(69)も会見。病気を持つ腎臓を移植されたことについて「これで悪くなったら仕方がない。万波先生に(手術を)しませんかと言われたので手術をした。偉い先生と聞いていたので、二つ返事で『します』と答えた。感謝しています」と語った。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/
20061104k0000e040051000c.html
提供2病院、倫理委開かず 指針抵触か 病気腎臓移植
愛媛県宇和島市の宇和島徳洲会病院が、病気で摘出した患者の腎臓を別の患者に移植していた問題で、摘出された臓器を提供した岡山、香川両県の2病院が、移植の可否を審議する倫理委員会を開いていなかったことがわかった。いずれも臓器提供者(ドナー)と移植患者との間に親族関係はなく、日本移植学会の倫理指針に反する疑いがある。執刀医の一人は「捨てられるはずの臓器が移植に使えるのなら使うべきだ」と主張。移植医療をめぐる同学会との見解の相違が色濃く浮かび上がった。
倫理委を開いていなかったのは、岡山市の川崎医大付属川崎病院と、香川県丸亀市の香川労災病院。
川崎病院の男性医師は今年5月、良性の腫瘍(しゅよう)があった50代男性の右腎臓を摘出。応援要請を受けて院外から手術に加わった万波廉介医師(60)が術後、兄の万波誠氏(66)が泌尿器科部長を務める宇和島徳洲会病院に腎臓を送った。
この医師によると、腫瘍は異常に大きく、切除後の腎臓を体内に戻す可能性は当初から低かった。廉介氏から手術前、「摘出した場合は移植に使わせてほしい」と要請があり、患者から同意書を取ったうえで承諾したという。
医師は、院内に設置されている倫理委にこの件を諮らなかった。これまで腎移植の経験がなく、日本移植学会に加盟していないため、第三者からの臓器提供については、倫理委に諮るとした学会の倫理指針も知らなかったという。「腎臓はどうみても摘出し、処分する状態だったが、高度な技術を持つ万波(誠)先生なら移植に使えるのかな、と思った。患者の同意があれば大丈夫、と判断した」と振り返る。
川崎病院の坂手行義院長は、摘出臓器が移植に使われたことを知らなかった。「100%倫理委にかけるべきケース。職員には倫理規定が周知徹底されていると思っていた。残念だ」と話した。
廉介氏は、川崎病院など岡山県内の3病院で、それぞれ1人の患者から摘出した腎臓を移植用として宇和島に送ったことを認めている。このうち同県内の公立病院では今年6月、腎臓がんが疑われた70代女性の腎臓を摘出。調べてみると、がんではなく、石灰化した組織がこびり付いた状態だったので、これをはぎ取ったうえで移植した。病院長には、摘出して約1週間過ぎてから移植の件を報告したという。
3件とも治療して体内に戻すのは時間や手間がかかり、合併症の心配もあったため、より危険性が少ないと考えて、同意を得たうえで摘出したという。「人の役に立つなら使って、と患者から言われた。その思いに誠心誠意応えて、やったことだ」と言い切る。
一方、香川労災病院の医師(58)は昨年以降、70代と50代の患者2人からがんにかかっていた腎臓を摘出。腫瘍を切除し、いずれも倫理委に諮らないまま、宇和島徳洲会病院に臓器を送った。この医師は万波医師らと移植医療界から「瀬戸内グループ」と呼ばれる手術チームをつくり、多数の生体腎移植を手がけている。
医師は「病気で摘出した腎臓は、健康な人から摘出された生体腎とはいえない。こうした移植は学会の倫理指針に定められておらず、倫理委の審議対象外だ。患者の同意を得ており、法的にも問題はない」と話す。
泌尿器科の専門医は「今回の移植に使われた臓器が健康な生体腎とはいえない、というのは言い逃れ。まず、十分な機能があってがんにかかっていないと担保されている臓器なら、患者本人に戻すべきだ。患者の同意を得るのにも十分な時間をかける必要がある。手術中の診断では腫瘍の良性か悪性かの判断はしにくく、移植をすべきではない」と話している。
http://www.asahi.com/national/update/1104/OSK200611040024.html
疾患腎移植:学会が批判「金になるからやらせたのか」
宇和島徳洲会病院の腎移植問題を調査している、日本移植学会の「生体臓器提供にかかわる特別委員会」の大島伸一委員長(泌尿器科)は「移植を受ける患者は免疫抑制剤を使うため免疫機能が低くなり、通常よりがんになりやすい。それなのに、がんの腎臓を移植するのは常識でもありえないし、医師として許されない。患者が希望したというが、希望の内容は医師の説明次第で変わってしまう。万波医師は患者との信頼関係を強調するが、これでは、ルールに基づいて行っている移植医療に対する、社会の信頼を失わせる。院長がこういう医療を黙認したなら、病院として社会性を欠く。金になるからやらせたのか、とさえ疑われかねない」と批判する。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/
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2006年11月04日
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