腎移植をめぐる臓器売買事件で逮捕された容疑者の移植手術を執刀した宇和島徳洲会病院(愛媛県宇和島市)の万波(まんなみ)誠・泌尿器科部長(65)が、朝日新聞の単独インタビューに応じ、事件について語った。臓器売買については「知るはずがない」と、関与を改めて否定。ただ、売買を禁じる現行法には疑問を感じる、との思いも吐露し、「容疑者を非難する気にはなれない」と述べた。
――逮捕された山下鈴夫(59)、松下知子(59)の両容疑者と臓器提供者(ドナー)の間に現金や車の授受があった、との疑いが持たれているが、事情を知っていたのか。
そんなの全く知らない。知っていたら、私だって最初から断る。
――仮に知ったとしたらどうするのか。
患者もドナーもそんなことを医者に漏らすはずがない。漏らしたら手術を断られるのがオチだ。臓器移植は「売買はだめ」という前提の上に成り立っている。だから、そんな患者は来ない。
――売買だったら手術はしないということか。
もちろん。前の病院に勤務していた時も「移植したい人がいたら臓器をあっせんする」とブローカーが来た。(病院職員に)「相手にしたらいけない」と追い返した。
――容疑者はなぜ、臓器売買をしたと思うか。
松下さんは山下さんを治したいという気持ちが強かった。ほかにドナーがいなかったから、(知人を)自分の妹ということにしたのだと思う。
――事件についてどう思っているのか。
松下さんは「私の腎臓を使って。私は死んでもいい」とまで言っていた。その気持ちを私自身は非難できない。結果としてだまされたが、恨んでもいない。私も迷惑だったが、かえって良かった。うちの病院にも移植をしたいという人が増えたし、臓器移植への関心も高まった。
――ただ、謝礼を贈ったのなら法に触れる。
患者には常々、「ドナーに感謝しないといけない」と言っている。感謝の気持ちの表し方はさまざまで、犬をあげる人もいれば、自動車をあげる人もいるかもしれないが、今の日本ではそれすら罰せられる。
――法律と現実が合わない、ということか。
米国は国を挙げて移植を進めているのに、日本ではお礼さえ違法とされる。ドナー不足という現実を臓器移植法がさらに締めつけている。
――仮定の話として、移植でしか助からない患者が臓器売買のドナーを連れて来たらどう対応するのか。
無条件で断るということはできないと思う。ほかに助ける方法がないなら、(売買と)知っていても手術するかもしれない。法律があるからといって黙って死ぬのを見ているわけにはいかない。
――どうして、そこまで移植に熱心なのか。
腎臓で困っている人が大勢いる。医療技術が進み、ドナーさえいれば腎移植は難しい手術ではなくなった。人工透析のつらさから解放され、結婚も仕事もできるようになる。患者は「こんなによくなるのか」と感動する。それを見るのが楽しみで移植手術をやっている。私の生きがいだ。
http://www.asahi.com/national/update/1007/OSK200610060076.html
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タグ:臓器売買

















