世界的な金融危機、建設・不動産不況、地方経済の疲弊…。次々と押し寄せる荒波に翻弄(ほんろう)され、多くの地方銀行が苦境に陥っている。2008年9月中間連結決算の業績予想を下方修正した地銀は上場87行の半分以上に上り、うち10行以上が最終損益で赤字に転落した。地域経済の“血流”を担う地銀の不振は中小企業向け融資で「貸し渋り」を招くことも考えられ、日本経済全体をむしばみかねない。
◆適切に仲介機能発揮
「中小企業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。民間金融機関として適切に金融仲介機能を発揮していくことが求められている」
全国銀行協会の杉山清次会長(みずほ銀行頭取)は21日の定例会見で、企業経営の先行き不透明感が増す中で、地銀も含む加盟金融機関が果たすべき役割をこう強調した。
全銀協は同日、中小企業などの資金需要に対応するため、会員各行に対して積極的な融資を行うように申し合わせたと発表した。経営体力が低下した金融機関が中小企業を中心に貸し渋りをしているとの批判が出ていることに対応した措置だ。中川昭一財務・金融担当相も15日に銀行トップらを集め、中小企業に円滑な資金供給を行うように要請した。
もっとも、杉山会長は貸し渋り批判自体には「貸し渋りをしているという意識はなく、貸せないところには貸していないということだ」と真っ向から否定。その上で「(バブル崩壊後の)不良債権問題のような状況を二度と作りたくない」と、融資態度を厳格化させていることについて理解を求めた。
ただ、日銀の統計によると今年8月末の国内銀行の中小企業向け融資残高は前年同月比1.6%減の178兆6540億円と減少傾向をたどっており、名古屋市の名古屋商工会議所の中小企業相談所でも「資金繰りが苦しい」との相談が目立ってきているという。
杉山会長の言葉とは裏腹に、地銀の体力が弱ってきたことで中小企業融資へのハードルが高くなり、貸し渋り拡大も懸念される状態だ。
◆札幌北洋、初の赤字
「分散投資のため株式などへの投資を増やしていたが、最近の株安は予想以上で対応が追いつかない」。今月17日に9月中間決算の連結最終損益が01年の発足以来、初の赤字になると発表した札幌北洋ホールディングス(HD)の菊地豊彦専務は、札幌市での会見でこう嘆いた。
同社は傘下の北洋銀行と札幌銀行が14日に合併したばかり。だが、連結最終損益は当初予想の99億円の黒字から75億円の赤字(前年同期は155億円の黒字)に落ち込む見込みで、いきなり試練に直面した格好だ。
赤字転落の要因は2つ。1つは、米国発の金融危機深刻化によるダメージだ。世界的な連鎖株安で、有価証券の減損損失は204億円に達した。さらに、同社は9月に破綻(はたん)した米証券大手リーマン・ブラザーズの債券を51億円保有していたが、約40億円の売却損が発生した。
もう1つの打撃は、北海道内の大型倒産の多発だ。道内建設大手の北野組(旭川市)が7月に道内建設業で最大の負債総額118億円を抱えて破産するなど融資先の大型倒産が相次ぎ、不良債権処理損失(与信コスト)が前年同期比169億円増の235億円に膨らんだ。想定外のダブルパンチで、札幌北洋HDは09年3月期通期の業績予想も大幅な下方修正を余儀なくされる可能性が大きい。
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■融資絞り込みで地方疲弊
業況悪化は札幌北洋HDにとどまらない。今月に入って、9月中間決算の業績予想を下方修正した上場地銀は30行以上に上る。もともと地方経済の回復が遅れていたことに加え、昨年夏のサブプライムローン問題表面化を機に外資系ファンドによる不動産投資が落ち込み市況が悪化。地銀の大口貸出先だった不動産・建設業の経営破綻(はたん)が続出し、与信コストが急増した。
野村証券金融経済研究所によると2008年4〜6月期の段階で87行合計の与信コストは約1520億円と、前年同期の2.3倍に達したが、7月以降も北陸の中堅ゼネコン真柄建設(金沢市)や宮崎県最大手の志多組(宮崎市)など地域の有力企業が相次いで破綻。東京商工リサーチの集計では、9月の建設業の倒産件数は前年同月比41.1%増、不動産業も30.5%増と増勢に拍車がかかり、地銀の与信コストも膨張が避けられない。
これに追い打ちをかけたのがリーマン破綻以降の国際金融市場の激震だ。保有株の値下がりで多額の損失。リーマン向け債権がある地銀も多く、損失処理は不可避。まさに「泣きっ面に蜂」(地銀関係者)の惨状だ。
北国銀行(金沢市)は7月、真柄建設の破綻で与信コストが大幅に膨らんだことを主因に、9月中間決算の業績予想を従来の30億円の最終黒字から10億円の赤字に下方修正した。「今年度は最終損失に陥る中小規模の地銀がかなり出てくる」。野村証券金融経済研究所の藤原悟史アナリストもこう危機感を募らせる。
地銀が業績悪化を受けて融資を絞り込めば、地域経済が「資金繰り難の企業の倒産急増→銀行の業績悪化→融資減少」という負の連鎖に陥る恐れは強く、地銀の経営にも暗雲が垂れ込めている。
http://www.business-i.jp/news/sou-page/
news/200810220009a.nwc

税金注入候補63社…一部地銀は「一時国有化案」検討
金融機関に予防的に公的資金(税金)を注入できる新金融機能強化法案が、月内成立に向け動きだした。マーケットの関心は、注入を受けそうな金融機関はどこかの一点に尽きる。夕刊フジでは金融庁作成の内部資料を入手。それをもとに注入候補となりそうなところを洗い出したところ、地方銀行が1行、第2地銀が4行、22の信用金庫、36の信用組合の計63金融機関が候補として浮上してきた。
同法案の最大の狙いは、地域金融機関の資本を公的資金で手厚くすることによって、貸し渋りなどの動きを封じ込め、地域経済や中小企業の活動を金融面から支えることにある。
中川昭一・財務相兼金融担当相も21日の閣議後会見で、同法案について「資本注入した場合でも、貸し出しに回らないといけないので、しっかり対応したい」と語った。
政府・与党は24日に閣議決定したうえで国会に提出し、30日にも成立させたい考えだ。
では、どのような金融機関が公的資金注入の候補となるのか。それを探るうえでカギとなるのが、銀行の健全性を示す「自己資本比率」という数値だ。比率が高いと健全とされ、逆に比率が低いと財務面で不安のある金融機関となる。
金融機関の自己資本比率については国際的な基準が設けられていて、国際業務を行う金融機関には8%以上の自己資本比率が必要となり、国内業務のみを行うところは4%以上が必要になる。
「金融庁は新たな金融機能強化法案により、とくに国内業務を行う地域金融機関の自己資本比率を8%にまで高めたいと考えているようだ。とすると、自己資本比率が7%を割り込んでいるような地域金融機関が公的資金注入の対象候補となってくるだろう」(金融関係者)
金融庁が作成した、預金取扱金融機関の2008年3月期の財務データ資料から、「自己資本比率7%割れ」の金融機関をピックアップすると、計63の金融機関が該当。
地銀のなかで自己資本比率が一番低かったのは、秋田市に本店を構える北都銀行だった。08年3月期連結決算は、市場金利の上昇で利ざやが縮小したことや、株式売却損が増えたことで6億円の最終赤字。有価証券の含み損が拡大したことも影響し、自己資本比率は前の期の9.11%から5.58%に激減した。
前橋市の東和銀行も自己資本比率が5%台。08年3月期連結決算は1億円の最終黒字だった。前の期に274億円の最終赤字に陥ったのに続く業績低迷で、自己資本比率は前の期の5.62%から5.70%にわずかに上昇しただけだった。
信用金庫では、神奈川県の湘南信金が自己資本比率4%台でもっとも低い。北海道の伊達信金、長崎県の西九州信金とたちばな信金は5%台だった。
湘南信金は不良債権処理損失が膨らんだことで、08年3月期の最終損益が56億円の赤字に。伊達信金は有価証券の含み損が前の期の1億円から34億円に拡大したことで、自己資本比率が11.47%から5.30%に半減してしまった。
信用組合では、群馬県のかみつけ信組、岐阜県のイオ信組が自己資本比率4%台となっている。
金融関係者は「信金、信組など協同組織金融機関は半分ぐらいが過小資本となっているようだ。このままいけば、09年3月期決算を乗り越えられないところが大量に出るところだった。そういう意味では、金融機能強化法の復活は“渡りに船”だ」と明かす。
驚愕なのは東北と九州の地銀だ。この地域のいくつかの地銀は08年9月中間決算を乗り越えられそうもない状態で、「金融当局は11月中旬にも金融危機対応会議を開き、これらの地銀をりそな銀行や足利銀行のように一時国有化して処理する準備を進めていた」(金融関係者)というのだ。
金融危機は海の向こうのこと−と言ってられなくなってきた。


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